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第2話「甲州ワインの変遷」(後篇)
「‘甲州ワインを知るためのキー・ワード’主に醸造面から見た取り組み」

 
  様々な甲州ワインを試すことが出来る「ブドウの丘」。
 
  「ブドウの丘」内のワインセラー。

  今回は、ワインの品質向上に関わる様々な取り組みを、醸造的側面を中心にご紹介します。それらの内容を味わいのキー・ワードとして掴むことが、多彩な「甲州ワイン」の味わいを理解する手助けになるでしょう。


「フレッシュ・アンド・フルーティ」

日本のワインの質的向上が始まる以前、世界的に見て白ワインの品質向上に貢献したのは、1960年代のドイツのワイン産業でした。厳格な微生物管理、例えばフィルターの使用や低温殺菌の手法を用いることで可能となった、クリーンで新鮮な果実味を活かした半甘口の白ワイン造りで、一世を風靡したのです。
一方、日本では1970年代中頃から、山梨大学等の研究機関とメルシャン社を中心としたワイン生産者による、数々の醸造面における「甲州ワイン」の品質向上が試みられてきました。それらの内、最も初期の成果が、果汁を丁寧に清澄し、果実の新鮮さと甘みを残すことに成功したフレッシュ・アンド・フルーティな「甲州ワイン」だったのです。
発酵を途中で終了させることにより残るワインの甘さは、「甲州ブドウ」の皮に由来する渋みを中和させるのに都合が良いばかりか、懸案であった平坦なボディに厚みを加えました。又、当時導入された、除梗後の搾汁を可能とする水平式のブドウ圧搾機の利用が、渋みの元となる茎からのタンニン類の抽出を押さえることに大きく寄与したのです。しかし他方では、辛口の「甲州ワイン」造りで明確な個性を表現することは、未だ成功できずにいました。


「シュール・リー技法の導入」

北西フランスの大西洋沿岸部にあるミュスカデ地区では、個性の弱いムロンド・ブルゴーニュ種のブドウから、酸味のイキイキとした辛口ワインを産することで有名です。そのミュスカデ・ワインに採用されている、新鮮味を保ち、旨みとボディを与えるためのテクニック‘シュール・リー’(フランス語で澱の上の意味)を、辛口「甲州ブドウ」のワイン造りの為に日本で初めて導入したのは、メルシャン社。1983年の事でした。 
アルコール発酵を終えた後のワインは、酵母の死骸と一緒に一定の間、タンクもしくは樽の中で静置されます。その結果、酵母の細胞の分解によるアミノ酸のワインへの溶出が進み、味わいに複雑さをもたらします。
又、同じく酵母細胞から溶出される糖たんぱく質の一種であるマンノプロテインは、「甲州ブドウ」の皮が持つピンク色の色素を脱色する効果があり、「甲州ワイン」が色づくのを防いでくれると言われています。
しかしながら単にワインと澱を一緒に寝かしておけば品質が向上する訳ではありません。品質の良い澱を得るためには、適切な果汁処理、酵母の選択や発酵コントロールが必要とされますし、接触期間中にはワインに異臭を与える硫化水素の発生を防ぐために、必要な酸素を供給するワインの攪拌作業は欠かせません。
現在でもシュール・リーは「甲州ワイン」造りのスタンダード・テクニック。そして、シャトー・メルシャン勝沼甲州は「辛口甲州ワイン」のベンチマークとなっています。
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 「フレッシュ・アンド・フルーティ」/「シュール・リー技法の導入」   >> 「ブドウ果汁の濃縮―逆浸透膜の利用」...

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